「鉄砲を始めたら離婚する」妻の言葉を無視して買った散弾銃 渓流釣りと、漁船に同乗するという楽しみに加え、10年前からは鉄砲を持って山や川を歩くという楽しみが加わった。この狩猟を始めるときは、今までにない妻の激しい抵抗にあった。 「私は基本的には釣りだっていやなのに、今度は鉄砲で生き物を撃つだって? 冗談じゃないわよ」 と妻はわめきちらした。 実は、渓流釣りに狂い出した頃から、狩猟には憧れていたが、かなり金がかかると思ってあきらめていた。しかし、思ったよりは金がかからないことを知って、心の中の道楽虫がうずき出した。そしてそれを口にしたところ、先の妻の言葉が返ってきたのだ。
秋田県の場合、渓流釣りの期間は3月21日から9月21日まで。その後はキノコ採りでそこそこ山を歩くが、冬の間は何もすることがない。
釣り同様、自分で捕ってきた獲物を自分で料理して食べたら、どんなにおいしかろう。
猟犬を連れ、誰もいない雪の野山をカンジキをつけて歩く楽しさは、渓流釣りの比ではなかった。ときどき、ベテランと一緒に歩いて獲物の習性やポイントなどを教えてもらった。
獲物が捕れるにこしたこたはないが、渓流釣り同様、緊張感を持ちながら猟犬と山や川を歩くだけでも充分楽しい。カモの猟場のひとつは、自宅から車で10分ほどの所にある。仕事のあるときでも、猟犬の散歩がてら1日30分は川岸を歩く。運よくカモがいて、弾が当たればもうけもの。その日の夕食はカモ料理となる。
現在、読売新聞秋田県版に、妻のイラストと僕の文章による「捕る採る取る」を週に一回連載している。これは秋田の海や山や川で自然と深くかかわり、共存しながら暮らしている人たちを取材したもの。これはそれこそ僕の道楽の延長そのものだ。 ところで、僕の家には冷凍冷蔵庫がふたつある。中には知り合いの漁師さんが送ってくれた魚や、取材先からのお土産、自分で釣った魚に、鉄砲で捕った獲物、知り合いの加工業者がつくった試食品などが詰まっている。だから、スーパーなどで鮮度の落ちた動物性タンパク質を買う必要はまったくない。
何だかんだ言っても、やっぱり田舎ライターはやめられない。 |
この文章はポカラ出版発行「ポカラ」1999年1・2月号に掲載された記事を一部訂正したものです。 |