特別指令
『タラ・タラ・タラ』

 「参加人数15〜16名。大きくて鮮度が良く、出来るだけ安いタラを調達せよ!!」との特命が下った。これはボクが住む秋田市新屋地区の知人・友人が集まり、旬のタラをそれこそタラ腹食って飲む会「新屋のタラ祭り」(2月5日)用のタラだ。
 「第3回 新屋のタラ祭り」が成功するか否かは、ひとえに小西の腕にかかっていると言っても過言ではない。ものとりライターのコネクションは、県内の漁師、漁協、仲買人に広がっており、そんじょそこらの市場から買う魚より数段も鮮度が良く安い魚を手に入れることができる。

 2月3日、まずは知り合いの金浦漁協所属の底引き漁船の船舶電話に電話した。「小西さん、今だばタラ高いど。シケでなかなか船が出られねがったし、タラ祭り(これは金浦の伝統行事で、神社に大ダラが奉納され、タラの即売会もある)も近いべ。この前までキロ1000円(もちろんオス)だったども、昨日は1.700円まで上がったさげ・・・」
 「んだども、小西さんの家で食うタラだったら1本くれでやるど。港さ取りに来い」このように小西と漁師さんは仲がいいのだ。「違う、違う、家で食うタラでね。15.16人も集まってタラ食って酒飲むんだ」いくら仲の良い漁師でも大ダラ3本はもらえない。そこで作戦を変更し、男鹿市の椿漁港の水産加工業者に電話した。
 業者の話によると今年はタラが不漁で高値が続いているとのこと。小西は考え、悩んだ。
 「金浦のタラ祭りは2月4日。それに備えて南部漁協ではタラを買い集めている。4日のセリではガクンと値が下がるに違いない。しかし、4日がシケだったらタラは手に入らない。この際、多少高くても買うしかない!」結局、男鹿市の加工業者にお願いすることにした。
 「オス2本に、メス1本。それぞれ5キロ以上の大きなタラを」
 ちなみに、タラは白子の入っているオスが高く、タラコを抱いたメスの2倍はする。その夜、業者から電話が入った。
 「小西さん、なんとか3本は確保した。オスはキロ1.350円。明日、取りに来てけれ」
 翌日タラを受け取りに行ってビックリした。どれも10キロ近い大ダラではないか・・・。頭の中のソロバンをはじいた。3本で3万円也。それにしても立派なタラだ。これだったら昆布締めもタラチリもバッチリ。15人では食いきれない量だ。15人で30キロのタラを食うとすると、1人2キロは食べることになる。
 「しまった。買いすぎてしまった!!」

 この大ダラを、まずは知り合いの飲み屋に持ち込んだ。大きなまな板の上でバラし、ダダミ(白子)を取り出し、半分は昆布で締める。半分はタラチリ用。残りはザッパ汁用だ。メスから取り出したタラコはしょう油漬け。タラはとにかく捨てるところがない。
 「小西ちゃん、15人だったらオス1本とメス1本で十分だよ。このタラ、大きすぎるもの・・・」と、飲み屋の親父は言う。「いやーー、すごいタラだ。こんなタラ見るの、久しぶりだなーー。身が厚いから、どう料理しても最高だよ!」と親父はタラを誉めまくる。手に入れてきたのはボクだというのに。
 結局、一番小さいタラは自家用にすることにした。一番小さいといっても、8.7キロだ。ダダミのたっぷり入っているオスのタラだ。一家5人では、こんな大きなタラは食いきれない。テレビ局を定年退職した東京のFさんに送ってやろうかと思ったが、やめた。なんせあちらは夫婦2人。狭いマンション暮らしで、大きなまな板もあるまい。老夫婦2人でダダミ(白子・ダダミは海のバイアグラだ)を食いまくって精をつけたところで、どうにもなるまい。

 というわけで、8.7キロのタラは庭の雪の中に埋めた。こうしておくと、3.4日は大丈夫。これぞ氷温貯蔵である。この大ダラをどのようにして食べたかは、後日紹介するつもり。
 さて、「第3回 新屋のタラ祭り」は大盛況だった。メニューは、昆布締め、タラチリ、ダダミのシャブシャブ、ザッパ汁、タラコのしょう油漬け、ダダミの天ぷら。その他参加者が持ち寄ったガッコ(漬け物)、サケの飯寿し、ハタハタの飯寿し。まだまだあったが、忘れてしまった。
 飲み物は、ビール、日本酒の飲み放題。ひたすら食って食って、飲んで飲みまくった。

これで会費は一人3.000円。どーーーだ!!

 だから田舎暮らしはやめられない。



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