2002年12月 ●●● 雪が降れば辛み増す、山ワサビ ●●● |
11月中旬、五城目町(ごじょうめまち)の朝市で実にみごとな山ワサビを見かけた。ひと山で500円。根の直径が太いところで3cm近く、長さは14、5cm。ボクも山ワサビはよく採るが、こんな立派なものは採ったことがない。 「このワサビ、ばっちゃん採ったの?」と聞くと、「んだ。オレ山さ行って採ってきたんだ。1回雪かぶったやつだがら、辛みだば最高だで!」と、ばっちゃんは誇らしげに答えた。ばっちゃんの名前は斉藤トキエさん(74)。五城目町馬場目に住み、朝市で山の幸を売るようになってから52年目。商品のほとんどは自分で採ってきたものだという。 採ろうと思えば夏でも採ることができる山ワサビだが、辛みが強いのは白い花が咲く前の春先と、余分な葉を落とす初冬だ。特に雪をかぶった後のものは、春先のものよりさらに辛みが強い。 「白い花っこが咲けば目立つから誰でも採れるども、今の時期だば場所おべでる(知っている)人しか採れねんだ。オレだば山菜、キノコでしょっちゅう山さ入ってるがら場所わがるんだ。この太さになるには10年近くかがるべな。山の奥まで行って採ってきたんだ。フフフ…」 聞けば聞くほど、その山の知識と健脚ぶりには驚かされる。「ばっちゃん、なんと丈夫だごど」と感心すれば、「なんもだ。オレの母親だば92まで生ぎだども、91まで山歩いだがらな」と平然と答える。こんな会話を交わせるのが朝市の楽しいところだ。 山ワサビは、すりおろして刺身の薬味にするのもいいが、しょうゆ漬けもおいしい。葉と根を一緒にきざみ、ザッと熱湯をかけてから、しょうゆとミリンを入れた容器に素早く移して密封する。翌日フタを開けると、鼻から頭のてっぺんまで突き抜けるような強烈な香り。口に入れれば涙がにじむ程の辛さだ。 もちろん、ばっちゃんの山ワサビを買ったことは言うまでもない。 |
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