2003年1月 ●●● 回る台とベテランの技が生み出す手焼きのきりたんぽ ●●● |
秋田駅から徒歩数分。秋田市民市場の近くにあるその店からは秋から春にかけて、きりたんぽを焼く香ばしい香りが漂ってくる。12月だというのに店のガラス戸は開けっ放し。赤々とおきた炭火を置いた台を前にして、額に汗を浮かべた従業員がきりたんぽを焼き続けている。 「この台は私のおばあさんの代に工夫したもので、もう30年以上になります。それ以前は囲炉裏で焼くように、灰に串を刺して焼いていたと聞いています」。こう説明してくれたのは「炭火焼きりたんぽ」で知られる鈴和商店の専務、鈴木昌幸さん(28)。 この台は機械と呼ぶべきか、それとも道具と呼ぶべきか?何にしても実に機能的だ。台に手をかけて押すと、左右どちらにでもクルクル回るので、人が動かなくても串を移し替えることができる。外側の列から内側の列に徐々に移し替えることにより余分な水分が抜け、最後に最前列でこんがり焼き上げる。鈴和商店にはこの台が計七台。一人で二台を扱い、きりたんぽを焼き続けている。 「杉の串にご飯を巻き付ける仕事も、台の前に立って焼く仕事も両方やるけど、特に焼く仕事は気が抜けません。焼きが足りないと串がうまく抜けないし、焼き過ぎると黒コゲ。そうなったら売り物になりません。ほんのりキツネ色になったら、サッと抜く」。この店で働いて12年目になるという菅原さんは説明しながらも、その視線は左右の台を行ったり来たり。台を少し回しては串を移し替え、ほんのりキツネ色に仕上げていく。 この店では年末年始のピーク時には2升炊きの釜で1日70釜も炊き上げ、約5000本のきりたんぽを作るという。1日で使う炭の量は9000Kg。パートを含め20名の従業員でフル創業となる。 「今時、うちのような手焼きの店は珍しいようですけど、『やっぱり炭火は味が違う』ってほめられるのがうれしくて…」と昌幸さん。作業は3月いっぱい続けられる。 |
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