2004年 5 月  ●●● 地元成年会が守り続ける刺巻湿原のミズバショウ ●●●

ミズバショウ ハンノキ林に広がる湿原の広さは約3ha。清らかな雪融け水が流れる一帯に約6万株ともいわれるミズバショウの花が咲き始めるのは4月上旬から。湿原に延びる木道を散策していると、花の甘い香りが漂ってくる。
 今年で10回目を迎える田沢湖町刺巻(さしまき)地区の「ミズバショウまつり」だが、昨年は約12万人もの観光客が訪れたという。「私ら子どもの頃はベゴノシタって呼んでたんすな。こごにいっぺ咲くのは知っていだども、わざわざ見に来るようなもんではねがった。それがなぁ…」。こう感慨深そうに話してくれたのは、刺巻「ミズバショウまつり」の実行委員長、中島正一さん(56)。中島さんは刺巻地区の成年会会長でもある。
 山奥の湿原に群生するミズバショウが国道沿い、しかも車を降りてすぐの場所で見ることができるのは全国的にも珍しいという。「十年前にこの企画を考えた時は本当にお客さんが来てくれるもんか心配だったんすよ。それが、遠くから来た人たちに『尾瀬のミズバショウよりいいねー』、『ミズバショウとザゼンソウ、それにカタクリまでも一ヵ所で見られるなんてここだけですよ』なんて誉められて、嬉しくてすよ…」と中島さんは目を細める。
 成年会では湿原を守るため毎年晩秋にヨシなどの草を刈り、雪融け前には林の枯れ枝を片付ける作業などを行っている。「最初の頃は肥料をやったこともあったども、自然に逆らえばダメだということで、今は何もナシ。でも草刈りをしているので、ミズバショウもザゼンソウもなんぼかずつ増えてきているようだんすな」。
 入園料はと聞けば「今のところは無料です」。駐車場や仮設トイレの維持管理費も馬鹿にはならないだろうと思うが、中島さんたちは控えめだ。そういえば仮設トイレの横に置かれた「協力募金箱」も控えめだった。
 見せてもらう私たちまで協力を控えめにすることはないなと思った。


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