2004年 12 月  ●●● 菊の花を使った南蛮べっちょ 味の決め手はつぶ油 ●●●

南蛮べっちょ  晩秋から初冬を彩る菊の花。峰浜村(みねはまむら)には、この菊を使った「南蛮べっちょ」というおもしろい名前の料理がある。南蛮を使い、べっちょをかく(泣く)ほどに辛いことからこの名前がついたらしい。
 「この料理は、つぶ油が欠かせないの。これがねえば、ただ辛いだけの料理になってしまうから」と田村ミチ子さん(76)は容器に入った小さな実を見せてくれた。それは灰色の直径1ミリほどの球状で、エゴマの実だという。エゴマはシソ科の植物で韓国料理ではよく使われる食材。これが峰浜村でも栽培されていようとは…。
 「おらほの地区(大久保岱)では昔から栽培してるよ。んだども、刈り取ってからの脱穀、選別、乾燥、ゴミ取りとなんと手間でなぁ。今だば年寄りのいる家でねえば栽培してねんすべ」  このつぶ油を深い鍋でパチパチ弾けるようになるまで炒り、味噌、砂糖、南蛮(唐辛子)、酒などを加えてすり鉢でする。つぶ油から出る油と味噌が解け合い、ゴマにも似た香りが食欲をそそる。この「つぶ味噌」が味の決め手だと田村さんはいう。
 菊、キャベツ、サワモダシなどのキノコ類、水に浸して塩出しした漬け物(たくあんやきゅうり)などを加えて和えるが、キャベツや漬け物は細かく切っておく。「とにかく材料の水気をしっかり切ること。私だば、さらしにつつんで、きっちりしぼるんすよ」
 出来たてをいただいたが、確かに子どもたちなら、べっちょをかきそうな辛さだ。しかし、つぶ油のせいなのか味にコクと深みがある。「昔から男たちの酒飲みの席には、とにかくこの一品。女たちのお茶飲みには、南蛮を少なくしてもう少し砂糖を入れるのよ」
 「同じ峰浜村でも山の向こうの塙川地区では和える材料の種類が違うの。郷土料理って、おもしれもんだすな」。「山奥の田舎だから、分かりにくいべなー」と自宅前に目印の赤い旗を立て待っていてくれた田村さん、ありがとうございました。


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