初めて乗ったイカ釣り漁船 イカ刺し丼のおいしさがその後の人生を変えた 第十八稲荷丸に初めて乗せてもらって最も感激したのは、立ちながら食べたイカ刺丼だった。普通、イカ釣り漁船が沖に出ると、操業前(夕方)に一回、夜中の12時頃にもう一回食事をとる。この夜中の食事がイカ刺丼だった。 11時過ぎ、食事当番が仕事の合間にイカ刺丼をつくり始めた。 まずは箱詰め前のイカの中から小ぶりなものを選び出す。超新鮮なイカを刺身にするには大きなイカは固すぎる。しかも大きなイカは値がいいので、自分たちで食べずに出荷する。 揺れる甲板に置かれたまな板の上で、板前も顔負けの細いイカ刺がどんどんつくられ、大きな皿に盛られていく。次に大根おろしを丼に2杯分もつくる。作業台の上にご飯を盛った丼が人数分並べられた。 「さあ、小西さん。食べなんせ、食べなんせ」 と船頭さんが勧めてくれた。 漁師さんたちは、ホカホカの丼飯にイカ刺を厚くのせ、その上に大根おろしの山をつくる。そして醤油をまわすようにかける。 「イカは消化が悪いもんだから、消化のいい大根おろしと一緒に食べるんだ。ワサビがよかったらワサビもあるから」 そう言って、料理当番がワサビも差し出してくれた。 こうなればご飯より、ビールだ。頭を下げまくり、初めて乗せてもらった側としては遠慮すべきだったろうが、我慢ができなかった。
「すみません。ビール飲んでもいいですか」
帰港後、一杯飲みながら、 |