●● 潟の春の味 ●● 
 2月下旬、残存湖の防潮水門近くはまだ所々薄い氷でおおわれていた。「ほら、ああして白鳥だちがココさ集まってくると、もうすぐ春だ。連中はココでエサ食って、青森まで飛んで行ぐんだ」と小玉喜市さんがつぶやいた。
 小玉さんは大正6年生まれ。まだまだ現役の潟の漁師さんだ。それだけに、一言一言に説得力がある。水門近くの作業小屋で、春の漁の準備をしていた小玉さんに話をうかがいました。

味のいい、産卵期の魚たち

 氷が溶ければ、まず一番最初にするのはゴリド(ゴリを捕るための仕掛け)を入れること。魚はなんでもそうだと思うども、卵をだいている時が一番ウメな。ゴリドには、その卵をだいたゴリやイトヨが入る。ゴリは塩蒸し、味噌貝焼き(みそかやき)が好きだな。イトヨは塩ふり焼きだ。
 『昔は、なんもかもなねほど捕れた』ども、最近はそうでもねえな。それより少ねぐなったのが、カレイとグンジ(ハゼ)。ほとんどいねぐなってしまった。その代わり最近増えてきたのが、川ガニ。これは焼いて食うのがウメな。ガニはいい値で売れるがらうれしいども、何で増えできたもんだべ。俺にもさっぱりわがらねな。ガニド(細竹と網を組み合わせて作った川ガニを捕るための仕掛け)は買えば高いもんだがら、こうして自分で作ってるんだ。
 そう、シラヨ(白魚)ものぼってくる。シラヨは水面近くを泳いでくるもんだがら、水面近くに目のこんめ刺し網をかけてな…。シラヨは吸い物か刺身。俺はやっぱり刺身が好きだな。
ドを作る 小玉さん

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