キャフロ

 キャフロを漢字で書くと「貝風呂」となる。現代風に説明すると、「一人用ミニ七輪」ということなる。上に乗せるのは大きなホタテの貝殻。これを鍋の代用としていた。
 秋田では、昔からこの貝殻に肉もしくは魚介類、それに野菜や山菜などを入れ、煮ながら食べることを「貝焼き」(かやき)といった。貝殻を使っていたころの名残で、貝殻を使わなくなった現在でも、煮ながら食べることを貝焼きという。

 つまり、土鍋であろうと鉄鍋であろうと、小さな鍋に具を入れ、煮ながら食べれば貝焼きということになる。秋田の名物料理のひとつに「ハタハタのショッツル貝焼き」があるが、これはハタハタという魚をショッツル(魚醤)で味つけした鍋料理。イワナを味噌で味つけすると「イワナの味噌貝焼き」ということになる。

 秋田ではかつて、ほとんどの家にキャフロと貝殻があった。夕飯となると、大人はお膳の前にどっかと腰をおろし、自分専用のキャフロと貝殻を使い「貝焼き」を食べた。
 しかし、子どもたちにはお膳もキャフロも与えられない。下座のちゃぶ台などが指定席。やがて15.16歳になり、一人前の仕事ができるようになると、自分専用のキャフロと貝殻を与えられたとか。キャフロを使って一人で食べる「貝焼き」は大人の証しだったのである。

 イラストのうち上の二つは、素焼きのキャフロ。素焼き独特の土色と、丸い形が暖かみをかもし出す。キャフロに乗せられた貝殻には持ちやすいように柄がつけられている。
 下の二つは、外側が木製のもの。使い込まれて黒光りをしている。内部の炭を受けるすのこ部分は金属製。



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