踏み俵

 ワラで編んだ60キロ入りの米俵が麻袋に変わったのは、昭和41年ごろ。その麻袋も10年ほどで現在使われている30キロ入りの紙袋に変わった。米俵はすっかり見られなくなったが、踏み俵はたまに見かけることがある。
 基本的には昔懐かしい米俵と同じカタチだが、使う人の身長や使い勝手を考え、大きさや造りは微妙に異なる。長靴をはいたまま靴先を差し込むもの。靴を脱いで、はな緒に指先をはさみ込むものなどがある。
 今回、久しぶりに使ってみたものは直径約25センチ、深さ50センチほどのもので、6年ほど前に作ってもらったものだ。

 小学5年生にして初めて踏み俵をはいた娘。よろけて転ぶところを見て、
「よし、お父さんが手本を見せてやるからな」という場面を期待していたのだが、意外や意外。娘は楽しそうに雪の上を歩き出した。
「お父さん、このワラでできた缶ポックリのようなの、なんて名前?」と娘が聞いてきた。
 なるほど、手と足を同方向に動かすのは、まさに缶ポックリの歩き方だ。こら、娘よ!これは遊び道具ではない。積もった新雪を踏み締めて道をつけるための生活用具だ。
 久しぶりに踏み俵を見て、子どものころを思い出した。少々の雪ならワラの感触も優しく楽しかったが、一晩で30センチ以上も積もった時は、腕も足もくたくただった。



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