2004年1月 ●●● 恐ろしさでは県内No.1?豊岩前郷地区の「やまはげ」 ●●● |
「前郷(まえごう)の『やまはげ』はおっかねどー」とは聞いていたが、日中の公民館で見ただけでもこれは恐ろしい。こんなのが雪の降る夜、ひっそりと家の中に入って来ていきなり「ウォー」と声を上げるという。子どもでなくても肝を冷やしそうだ。 「やまはげ」は「男鹿のなまはげ」によく似た伝統行事で、秋田市の豊岩(とよいわ)地区や下浜(しもはま)地区、雄和(ゆうわ)町など比較的海に近い地域に伝えられている。 「男鹿のなまはげ」のお面は赤や青に塗られているが、こちらは着色なし。また、ワラの装束のなまはげに対し、「夜ぶすま」と呼ばれる昔ながらの藍染めの夜具を着ている。 「この夜ぶすまが重いのなんのって。まあ20kg近くはあるんすべな。これに注連縄(しめなわ)を巻いてお面とモグ(八郎潟で採れた藻)をかぶれば、30kg近くになるべなぁ。こんなの身に付けて家々を回るんだもの。『やまはげ』になるのは、40代までがいいどごだべなぁー」と地区のお年寄りたち。 前郷地区では2匹で1組となり、3組が約70軒の家を回るという。「おらほの『やまはげ』は伝統を守ってるもんだがら、濡れた雪道でも素足にワラグツ。着るものは重いし、足は冷でし、お神酒っこ飲まねばやってらんねす」と、やまはげ役の古谷昌規さん(35)は苦笑する。 やまはげが口にするのは「ウォー」という叫び声だけで、あとはじっとにらみつけるだけ。この方が恐ろしく見えるからだ。「言うごど聞かねば『やまはげ』に…」と子どもには家の主人が言い聞かせ、お神酒などで『やまはげ』をとりなすのだという。「あまりしつこくやれば、子どもが引きつけを起こしてしまうもんだがら…。まあ、その辺は心得ているんす」と古谷さんは言う。 秋田市豊岩前郷地区の「やまはげ」は昔から毎年1月15日の夜に行われている。 |
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