2004年 3 月 ●●● 茶畑を覆う厚い雪が寒さから茶の木を守る ●●● |
つやつやした深緑色の葉も美しい茶畑は、静岡など気候の温暖な地方のものだけと思いがちだが、秋田にも茶畑はある。「北限の茶畑」として知られる「桧山茶」がそれだ。2月初旬、冬の茶畑を見たくて能代市桧山地区の梶原茂兎悦さん(76)のお宅を訪ねた。 「北限の茶畑といっても、製茶業を営んでいるところの北限であって、かつては青森県の弘前や黒石でも栽培はしていたんです。秋田県内では秋田市や角館町などの城下町でも栽倍はしてたけども、最後まで残ったのが、ここ桧山なんです」と梶原さんは言う。 桧山茶は享保15年(1730)頃から、時の桧山城主・多賀谷氏によって始められたという。「当時、使いの者が京都の宇治から茶の実を持ち帰り、この一帯に植えたと伝えられているんす。ここの茶畑はその後、改植もしてねもんだがら、樹齢はおそらく250年以上でねえすべが…」と梶原さんは推測する。 山の斜面にある茶畑に案内していただくと、辺りは一面の雪。点々と続く野ウサギの足跡も見える。「北限の桧山茶」の看板がなければ、ただの原野にしか見えない。この一帯は冬になれば氷点下10度以下になることもある。しかし厚く積もった雪が茶の木を厳しい寒さから守っているのだ。 「今は品種改良などでいろんな茶の木があるども、ここの茶は江戸時代から改良もなにもしてねんす。それに手で摘んで手でもむという製法も昔のまんま。こうやって桧山茶を作っているのは私一人になってしまったんす」 江戸時代から変わらぬという桧山茶はどんな味がするのだろう。 「去年まではなんぼか製茶して出荷してたども、今年からは止めることにしたんす。かあさん(奥さん)腰悪くしてしまって、これ以上難儀かけられねんすもの」と梶原さん。 「でも、この茶畑の手入れだけはしっかり続けていくつもりです。そのうち誰かが製茶を再開してくれるかもしれねんすべ…」。ボクが桧山茶の味を確かめられるのは、いつの日になるだろうか。 |
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