2003年3月  ●●● 豊作と子孫繁栄を願い木製のクワと男根を奉納 ●●●

カンデッコ ホオノキで作ったカンデッコ(クワ)とクルミの木で作ったへのご(男根)を約一尋(1.5m)の注連縄で結ぶ。これを地区の「賽の神堂」脇のご神木に、豊作、縁結び、家内安全などの願いを込めて投げ掛ける。西木村中里地区に約400年前から伝わる小正月の「中里のカンデッコあげ行事」だ。
 今年の祭りの準備は2月2日、材料となる木の切り出しから始まった。「毎年切ってるもんだから、地区の山には手頃な太さの木が少なくなってしまって…。最近は植林もしてるんす」と保存会の会長・門脇民雄さん(52)は言う。
 切り出した二種類の木は地区の会館の入り口に積み上げられる。3日以降、夜7時過ぎから夕飯を終えた男たちがナタを持って集まり出す。
「今みでに会館に集まってこしぇる(作る)ようになったのは25年程前がらだ。それ以前だば、それぞれ自分でこしぇだもんだ。俺が若げ時は炭焼き小屋でもこしぇだもんだ」と保存会の初代会長・布谷政男さん。
 代々伝えられてきた小正月行事だが、昭和30年代から出稼ぎに行く男たちが増え、奉納されるカンデッコも減少。このままでは作り方も忘れられてしまうとの危機感から保存会が結成され、地区の男たちが一堂に会し、カンデッコ作りが行われるようになったという。
 「俺らが若げ時は山仕事で誰もが器用にナタを扱ったもんだども、今だばナタを使う機会も少ねべ。でもな、毎年こしぇでれば上手になってくるもんだ」
 会館の広間では12名の男たちが真剣な表情で削り続けている。中にはちょっとおぼつかない手つきの20代の若者もいる。「カンデッコは簡単だども、やっぱりへのごは難しいな。出来たものを見れば、誰が作ったもんだがひと目でわがる。自分なりの理想があるんだべな」と笑い声があがる。
 祭り当日までに、約300組の素朴で味わいあるカンデッコが作られる。


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