2004年 7 月  ●●● ゼンマイと同じようにもんで仕上げる干しワラビ ●●●

干しワラビ  ゴザの上にしゃがみ込み、体重をかけるようにもみ続ける。その作業風景は遠くから見ると、まさにゼンマイ干しにそっくり。しかし近づいてみるとそれは赤褐色ではなく、白っぽい。灰をまぶしたゼンマイのようにも見える。
 「この白っぽくみえるのは塩。塩漬けのワラビを干すから塩が吹き出してくるんだ」と説明してくれたのは、上小阿仁村、高橋旅館のご主人の高橋健生さん(56)。昔からワラビを保存するには塩漬けが一般的だが、その塩漬けをわざわざ手間をかけて干しあげるとは、どんなメリットがあるのだろう。
 「塩漬けのワラビは、塩出しすれば味噌汁の実かおひたしにして食べるのが普通だすべ。ところがこうして干せば、ゼンマイと同じ。煮付けにも使えるから」と高橋さん。高橋さんのおばあさんはこれを使って「わらび一本煮」を作り、その味は宿のお客さんに評判だったという。
 かつては村内のあちこちで作られていた干しワラビだが、最近は作る人もめっきり少なくなったとか。高橋さんはおばあさんが作ってくれた懐かしい「わらび一本煮」を商品化しようと、試行錯誤の真っ最中。そのためにも、ある程度の量の干しワラビが必要となる。
 「村の人からワラビを買って塩漬けにしておき、天気のいい日を見計らって干す。一日中もんだりするもんだがら、容易でねえ。だがら、この作業は近所のかあさんに頼んでやってもらってるどもな…」と高橋さんは笑う。
 晴天が続いてもしっかり乾燥するまで最底2日。食べる時はお湯でざっと戻して流水にさらすが、完全に塩が抜けるまで3日はかかるいうから、なんとも手間のかかる保存食だ。
 最近は冷凍庫の普及で採れたてをそのまま冷凍保存。その都度湯がいて真冬でも旬の味に近いワラビを食べる家庭も増えつつある。しかし、昔ながらの塩漬けした山菜には、生では味わえない独特の味と食感がある。手間はかかるが試してみたいと思った。


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