2004年 8 月  ●●● 見た目によらずデリケート田んぼの堰に住むドジョウ ●●●

ドジョウ  暑い盛りにフーフー言いながら、熱々のドジョウ鍋を食べると、なんとなく元気が出てくる気がする。昔から滋養強壮の食品といわれているが、調べて納得。ドジョウは魚類の中で最も多くのカルシウムを含み、その量はウナギの約9倍。旬はもちろん夏だ。
 八郎潟町の安田勝次さん(58)はドジョウなど淡水魚を扱う仲買人で、天然ドジョウの取り扱い量は東北屈指。「親父の代からの商売で、かれこれ80年近くになるべか」という安田さんだが、やはりドジョウは激減しているという。「昭和30年代は今の10倍以上は捕れていたんすな。当時は国鉄のドジョウ運搬専用車輌に積み込んで、東京に出荷したもんです」と安田さんはいう。
 現在、近隣町村でドジョウを捕り、安田商店に持ち込む人は約30人。その中の一人、八郎潟町浦大町の北嶋繁雄さん(64)に同行して漁の様子を見せてもらった。
 軽トラで近くの農道を走り、堰に仕掛けた網を次々に揚げる。「田んぼの見回りを兼ねて普段は朝5時頃には家を出る。今は約20ヵ所に網を入れてるども、全部回るには1時間半位はかかるな。この辺の田んぼは山の堤から水を引いてるから水質がいいんだ。それに農薬も極力使ってねえしな」と北嶋さん。
 網の中にはドジョウの他、フナやナマズの稚魚、タナゴ、ザリガニ、ゲンゴロウ、オタマジャクシなども見える。特にドジョウやナマズなどは見た目に反して、生息環境の変化に耐えられないデリケートな魚たちだ。これぞ水質と一帯の自然環境が極めて良好に保たれている証。まさに昔ながらの「田んぼの堰っこ」だ。子どもの頃の楽しかったドジョウ捕りを思い出してしまた。
「んだども最近はドジョウの捕れる堰っこが本当に少なくなってしまったな」と北嶋さんはため息をつく。
 安田商店に集まる秋田産天然ドジョウは年間約20トン。保冷車に積まれ、主に東京の築地市場などに出荷されている。


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