●● 「煮干し」と「素干し」 ●● 
 秋のある晴れた日、進藤つくだ煮加工所の前には金網を張った大きなスノコが何枚も置かれ、男の人が白っぽい魚を忙しそうに広げていました。聞くと「ワカサギの煮干し」とのこと。干拓前の八郎潟では大量に捕れた魚を処理するため、つくだ煮屋さんでも「煮干し」や「素干し」を作り、各地に出荷していたといいます。前回に続き、進藤つくだ煮加工所の進藤高保さんに話をうかがいました。

生のままムシロの上で干した「素干し」

 干拓前は大漁が続いたもんだがら、つくだ煮をつくってもつくっても魚が余るほどだった。そんなときに余った魚を使ってつくったのが「煮干し」というわけだ。今だば余るどころか貴重品のワカサギだども、食べたいというお客さんがいるがら、こうしてつくっているんだ。
 「煮干し」といってもさっと干すだけだがら、ふわっとしていて全部食える。そのまま酒の肴になるし天ぷらにして食べてもいい。今風に言えば無添加、無着色、しかもカルシウムがたっぷりで体にいいわげだ。
 昔だば「煮干し」をつくってもまだ魚が余る。そんな時は「素干し」づくりだ。ムシロを敷いて、潟から揚がったばっかりのワカサギを生のまま広げて干す。それこそ男鹿の北浦でハタハタが大漁の時と同じように、魚の上を歩いて作業したもんだ。
 生のままで干し上げた「素干し」は俵に詰めて東京方面に送る。あちらではこの魚を使ってつくだ煮をつくったというども、味はやっぱり潟の「生煮き」の方が数段も上よ。
 今つくってる「煮干し」は天日乾燥だがら、つくりたいと思ってもお天気次第だ。これも貴重品になりつつあるな。
煮干し作り

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