2000年1月
つららのような形の魚は
その名もずばりスガ(氷)ヨ(魚)

 秋田の方言では氷のことをスガもしくはシガと呼ぶが、この魚はまさに冬場の軒先にぶら下がるスガの形をしている。表面はヌルヌルした寒天質で覆われており、全体的に白っぽい。まさにスガ(氷)ヨ(魚)という名前がぴったりの魚だ。
 正式名称はノロゲンゲといい水深300メートル前後の深海に生息しているが、この水深にはタラやハタハタが生息しており、これらの魚と一緒に水揚げされる。しかし、残念ながら象潟(きさかた)や金浦(このうら)など県南の沿岸部以外には流通していない。
 八森(はちもり)町を中心とする県北部漁協の職員に聞くと、「オラほでもあの魚は網に入るども沖で捨ててくる」と言うし、男鹿(おが)の底引き漁船の漁師に聞いても、「誰があんな魚食うってよ!!沖でぶん投げてくる」という返事。しかし、北陸金沢では吸い物の椀種や干物の素材として高級魚の扱いをされている。
 ボクにスガヨのおいしさを教えてくれたのは金浦町の漁師、越川勘三さん。越川さんは2年前まで底引き漁船に乗っており、取材で乗船したボクにスガヨとガサエビ(クロザコエビ)の味噌汁を作ってごちそうしてくれた方だ。
「スガヨはあっさりした味の魚ださげ、エビのダシの味噌汁が最高だな。醤油味の煮付けもいいもんだ。なして男鹿の方の漁師だぢは食わねもんだべ…」
「干物にしてもウメもんだ。頭と内臓を取ってヌルヌルが消えるまで干すんだ。串に刺して軒先に吊せば、それごそスガッコみでだど」と越川さんは笑う。
 越川さんの教えの通り、干物を作ってみた。ヌメリが取れた生干しの状態で焼いてみると、ふわふわした身で極めて上品な味がした。やっぱり、沖で捨ててくるのはもったいない。
スガヨ1 スガヨ2



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