1999年12月 |
●●● 「氷まくら」と「湯たんぽ」・「抱き樽」は一台二役 ●●● | |
県外の大手メーカーの中にはエアコンなどで工場内の温度管理を徹底し、1年中酒造りを行っているところもあるというが、県内の各造り酒屋は寒さが厳しくなるこれからが酒造りの最盛期だ。 冬といっても暖冬の時もあるし長期間にわたって寒波が居座る時もある。気温に敏感に反応し、酒造用タンクの温度管理に気を使うのが蔵人たちだ。 秋田市新屋にある「秋田晴(秋田酒造株式会社)」の杜氏・加藤貢さんが持っているのは「抱き樽(だきだる)」と呼ばれているもの。酒のもととなる酒母(しゅぼ)を培養する時に使う重要な道具だという。 「酒母が発酵しやすい温度に保つため、氷を入れたりお湯を入れたりしてタンク内の温度を調節します」と加藤さん。温度を図りながら、ある時は「湯たんぽ」、またある時は「氷まくら」のようにして使うというのだ。 「室温も常に計り、蔵の戸を開けたり閉めたり、またタンク内の温度が目標値に達したら『抱き樽』を引き上げたりと、とにかく温度管理です」と加藤さん。 また、酒母を使って酒を仕込む時にも温度管理には気を使う。 「寒さが厳しい時は温度が下がり過ぎないようにタンク保温用のマットを巻いたり、暖かい時は雪や氷でタンクを冷やしたりもしました。今はジャケットといって、細いパイプの中を設定した温度の水が流れ、タンクを冷やしたり暖めたりする便利な機械が入り、随分楽になりました」 協和町に自宅のある加藤さんは正月も自宅に帰らず、蔵に泊まり続けて発酵途中の酒の世話にかかりっきりとなる。 「酒は生き物だからすな……」と優しい目でタンクを見つめる加藤さん。酒の仕込みは3月上旬まで続けられる。 | |
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