2002年2月 |
●●● タラの腹を押しては一喜一憂する漁師さん ●●● | |
1月中旬から2月中旬にかけての厳冬期、秋田沖では寒ダラ漁が最盛期を迎える。以前、金浦漁港の底引き漁船を取材したことがあるが、冷たい波しぶきを浴びながらの漁は、まさに北島三郎や鳥羽一郎の唄う海の演歌の世界。見ているボクも思わず下っ腹に力が入ってしまった。 網を揚げ大きなタラが甲板の一角に集められると、一人の漁師さんがその中に腰を下ろし、タラのでっぷりした腹を強く押しながら腹ビレ近くの肛門をのぞき込む。ボクには少々ユーモラスな光景に感じられたが、「よし野郎(オス)だ」、「なんだじゃべ(メス)か…」と一喜一憂しながら仕分ける漁師さんの目は真剣そのものだ。 サケやハタハタは顔つきや体型でオスとメスの区別がつくが、タラの場合は見た目はまったく同じ。肛門からわずかに出る卵や白子で判断するというのだ。 「野郎はじゃべの倍以上の値がするさげの…」と漁師さん。サケ、ハタハタ、ニシンなど、ほとんどの魚は卵を抱えているメスの方が値がいいが、タラだけは別。あの白くてぼってりしたダダミ(白子)が珍重されているからだ。10Kgのメスより5Kgのオスの方が値がいいというから選別に真剣になるのは当然のこと。 漁協職員の話によると、30年ほど前まではメスの方が高かったという。タラコは塩漬けするなどしてある程度流通可能だが、ダダミは鮮度の落ちが早いため地元での消費がほとんど。それが保冷技術の進歩や流通のスピード化で、首都圏などの遠方まで新鮮なタラの輸送が可能となった。そこで生のダダミの味が広く知られるようになり、オスとメスの価値が逆転したのだ。 「タラの白子でございます」。首都圏では、高価な器に上品に盛られて出てくるそうな。 | |
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