2003年2月  ●●● 寒につくって真夏に上げる真冬の花火工場はフル稼働 ●●●

花火 「打ち合わせや打ち上げの少ない冬が、花火づくりには最もいい時期ですね」。こう語ってくれたのは神岡町にある(株)北日本花火工業の専務・今野義和さん。4代目花火師の今野さんは全国でもトップレベルといわれ、昨年の「大曲の花火」では夜花火の部で最優秀賞、内閣総理大臣賞を受賞している。
花火づくりは紙製の半球の器に、あらかじめ作っておいた,星と呼ばれる火薬の玉を詰める。それを合せて球にし、その上に紙を何枚も貼って完成となる。
 「紙を貼って強度を高めることにより、球が割れるときの圧力が高まり、星が押し出される様に放射状に飛んで行く。これとは反対に、はじけるように飛んで行くのはよろしくありません」と今野さん。ボクのような素人にはこの違いがよくわからないが、要するに紙の貼り方や枚数により完成度が違ってくるというのだ。
 「以前は自然乾燥でしたから、秋田の冬は花火づくりには向かないといわれていました。でも乾燥室さえあれば,冬でもつくれる。うちの会社では昭和57年から始めました」
 球貼り工室では6人の女性が黙々と紙を貼り続けていた。「『大曲の花火』で十号割物というのはこの大きさで、直径は約30cm。これで33層は必要です」と今野さんはさらりと言ってのける。
 午前中に4層貼って乾燥室へ運ぶ。午後は乾燥室から取り出したものに6層貼って再び乾燥室へ。一日に10層しか貼れないので、33層といえば4日がかりの作業となる。このような作業を数個同時に行ない、しかも均一な厚さが要求される。これは大変な作業だ。
 「星を作る人。紙を貼るのりを作る人。ひたすら紙を貼り続ける人。それぞれが最高の仕事をしてくれるからこそ、いい花火ができるんです」
 今野さんは今年の夏も、素晴らしい花火を見せてくれるに違いない。


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