2002年10月      ●●● とんぶりの皮むき機械は地区の農家の企業秘密 ●●●

とんぶり  9月中旬、比内(ひない)町特産のとんぶりの収穫が始まった。とんぶりはほうき草の実で、だんぶり(とんぼ)の目のようにキラキラ光ることから、このように名付けられたともいわれている。栽培は同町の独鈷(どっこ)地区を中心に行われており、栽培面積は約43ha。
 ほうき草そのものは珍しいものでもなく、観賞用やほうきの材料として全国各地で栽培されていた。しかし、小さな実を収穫して加工・販売しているのは比内町が断然日本一だ。
 「とんぶりはな、脱穀までは楽だども、よいでね(容易でない)のはその先なんだ」と教えてくれたのは、収穫作業の手伝いをしていた岸一雄さん。「津軽の人から作り方を聞いて、独鈷でだば江戸時代から食っていだという話だ」と岸さんは言う。かつては食料というより、利尿効果や疲れ目解消などの薬として食べられていたらしい。
 「昔だば、手のよく動くばあさんのいる家でねば、とんぶり食われねがったもんだ。鍋で煮でがら冷(つ)めで水の中で何回も何回も、もみ洗いして皮を取らねばいげねからな。雪の降る頃に沢水や井戸水で洗うもんだから、指っこがガヂガヂになったもんだど」という話はボクも農業関係者から聞いた事がある。
 JAあきた北・園芸特産課の阿部さんの話によれば、とんぶりが商品として販売されるようになったのは昭和50年頃から。それ以前は余りにも手間がかかるため、自家用分しか加工できなかったからだという。しかし、昭和48年、地区に加工施設が完成し、一番大変だった皮むき作業の機械の開発にも成功。生産量が一気に増大し、初めて出荷できるようになった。
 「どんな機械なのか、私でも見たことがありません。地区の企業秘密ということになっていますから…」と阿部さんは言う。それでも最後の仕上げは人の目と指先だけが頼り。大変な作業ということにかわりはない。


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