2003年10月  ●●● 収穫の秋、田の神様に感謝してお供えする箕取り餅 ●●●

箕取り餅  「昔の農家だばなぁ、牛や馬が生まれたっていえば餅をついて祝い、水不足になれば神社の前で餅つきをして雨乞いをしたり…。まあ、いぐ餅をついたもんだな。山の神様だ、田の神様だ、水の神様だって、神様もいっぺいだもんだから、月に2〜3回は餅つきをしたもんだ」。こう語ってくれたのは、仙北町にある歴史民俗資料館『餅の館』の管理人・後藤森夫さん(80)だ。
 餅の館には祭りや祝い事、日常生活などその時々の場面でつかれた餅の実物模型が説明パネルと一緒に展示されており、その数はざっと4百種類。そのほとんどを作ったのが後藤さんだという。その後藤さんに10月の代表的な餅についてたずねた。
 「まぁ、みとり餅だべなぁ」と言いながら取り出してくれたのは、大きな箕。その箕の中で稲と鎌を従えてどーんと鎮座しているのが「箕取り餅」なのだという。
 「旧暦の9月29日(今年は10月24日にあたる)は刈り上げの節句でな。その日は朝早くからその年に収穫したモチ米で餅をついて、箕と一緒に田の神様にお供えする。俺の家でだば家族全員が神棚の下で正座して、田の神様にお礼を申し上げだもんだ」
 この箕取り餅は翌日お雑煮にして食べる。「特別の日だもの。飼っている鶏をつぶしてダシを取り、ネギやゴボウをいっぺ入れでなぁ。煮干しダシの時もあったもんだ。うめがったなぁー」と後藤さんは当時を懐かしむ。
 最近は農家といえども昔ながらの道具で餅をつく家はすっかり減少。業者に頼んだり、電動餅つき機でつく家がほとんどだ。餅の館に隣接する「みずほの家」では1週間前に予約すれば、昔ながらの餅つきを体験することができる。(予約は仙北町役場企画課■0187-63-3003)
 「なんぼいい機械を使っても、ウスとキネでついた餅の味にはかなわねすべ」と後藤さんは言う。まったく、その通りである。


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