2004年 9 月  ●●● 全国で一番出荷の遅い鹿角産「北限のモモ」 ●●●

モモ  甘くて果汁たっぷりのモモは真夏の果物だ。その収穫と出荷は気候の温暖な西日本から始まり、次第に北へと産地が移動する。リンゴなどのように保存ができないモモは、収穫したら即出荷。いわば産地間のリレーで大都市の市場にモモを供給しているが、全国の産地の中でアンカーを務めるのが鹿角産。9月中旬以降に出荷される「北限のモモ」は、残暑の厳しい首都圏の市場で年々人気が高まっているという。
 「実はお隣りの青森県でもモモを栽培している地域はありますが、出荷時期はここより早い。鹿角は気候的な条件から市場出荷時期が全国で一番遅いんです。だから北限のモモを名乗ってます」とJAかずの園芸課の松田里美さん(42)はいう。
 全国で一番モモの出荷量が多いのは山梨県、次いで福島、長野と続くが、秋田県の生産量はトップクラスの産地と比べると微々たるもの。しかし出荷時期が重ならず品質も上々なので市場での価格も高いという。
 鹿角市はリンゴの産地として有名だが、一部の果樹栽培農家では20年以上も前からモモの栽培に取り組んでいた。全国でも最も収穫が遅いというメリットを生かし、2年前に「北限のモモ生産出荷グループ」が結成され、現在では約35haの桃園で約130人の会員が栽培技術の向上に勤めている。
 「リンゴだけに頼らず、樹種複合として始めた農家がほとんど。現在の主力は川中島白桃という品種。当然、長年やってきたリンゴとは栽培方法はかなり違うども、市場からは『北限のモモはよく売れる。もっと、もっと出荷してくれ』って催促されるほど。会員は力が入っているんすよ」と会長の佐藤一さん(54)も嬉しそうな表情を見せる。収穫されたモモの8割以上は京浜方面の市場に出荷されるそうだ。
 とかく気候的ハンディが多いといわれる中山間地域の農業。その中でハンディをメリットに変えた「北限のモモ」の話には、明るさが満ちている。


前年同月
前月 INDEX 翌月
翌年同月

Home