2003年9月  ●●● 徹底的に洗って干す。 だから白い、男鹿のえご ●●●

エゴ 独特な磯の香りと、さっぱりした味が特徴の「えご」。えごは主に日本海側に面した地域で食べられており、新潟県では「いご(えご)ねり」、福岡県博多では「おきゅうと」と呼ばれるなど、地域によって形状や呼び方が少々異なる。
 県南の内陸部で育ったボクは、えごは黒っぽいものと思い込んでいたので、男鹿の白っぽいえごを見た時は驚いてしまった。この違いは原料となる海藻・エゴクサの処理の仕方にあるらしい。男鹿半島沿岸でエゴクサ採りが始まるのは7月の土用過ぎ。素潜りで採ったり、海岸に打ち上げられたものを拾い集めるが、これからが大変だという。
 「ところてんを作るテングサだば、ただ乾かせばいいども、エゴクサはそうもいがね。ゴミ取りもあるし、白くなるまでさらさねばいげねしな」と男鹿のばあちゃんたちは言う。
 採ったばかりのエゴクサは茶褐色で、磯の香りも強い。それを海水で丹念に洗ってから天日で干す。天気の良い日は洗っては干し、洗っては干すという作業を一日に3回も繰り返す。この作業を約3日間続けると、茶褐色だったエゴクサは薄いベージュ色に仕上がる。
 「以前、少ししかさらさないエゴクサで作ってみたけど、磯の香りが強すぎて、ダメ。えごはやっぱり白くなったエゴクサを使わねばだめだもんだなぁー」と男鹿市船川港双六地区に住む高桑ヤシ子さんは言う。
 沿岸部の各家庭では、この手間のかかったエゴクサを使ってえごを作るが、中には豆乳を加えるなどしてさらに白さを際立たせる家もあるとか。この白いえご、ほとんどが自家用のため店頭に並ぶことは少ないが、地元の魚屋でたまに見かけることもある。
 秋田市などで市販されている黒っぽいえごと食べ比べてみると、確かに磯の香りもまろやかに感じられ、上品な味がする。しかし、残念なことに地元産のエゴクサでえごを作る家庭は年々少なくなっているという。


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