2004年 10 月  ●●● 白と黄金色のコントラストが美しい、秋の鳥海百宅地区 ●●●

そば  9月初旬の鳥海町百宅地区(ももやけちく)。山ぎわの曲がりくねった道を車で走ると、白と黄金色が入り交じった、ちょっと変わった景色に出会う。黄金色は頭を垂れた稲穂、白はそばの花だ。標高400m前後の山あいに広がる耕地は複雑な形をしており、面積も様々。わずかな耕地にも転作作物としてそばを植え、先祖伝来の土地を守ろうとする地区の人たちの努力がひしひしと伝わってくる。
 法体(ほったい)の滝があり、マタギの里としても知られている百宅地区は冷涼な気候のため昔からそばの栽培が行われており、寛永19年(1642)にはすでにそばが栽培されていたとの記録も残っている。百宅地区は現在戸数46戸、その中の13戸が今もそばを栽培している。
 「百宅は昔はほとんどの家で自家用に栽培し、普段からよくそばを食べていたと聞いています。私も子どもの頃はばあさんの打ったそばをよく食べさせられました。でも、黒っぽくて固くブツブツ切れるようなそばで、子ども心においしいと思ったことはなかった。ただ冬場のヤマドリでとったダシだけはおいしかったですね」。こう教えてくれた佐藤孝征さん(29)は、100%百宅産のそばを使っているそば処「ももや」の店長。「ももや」は平成12年に国道108号沿いにオープンした「鳥海町そば等加工提供施設」の中にあり、製粉も行っている。
 高校卒業後、東京の和食の店で料理の基礎を学んだ佐藤さんはその後、千葉県のそば屋に就職。一からそば打ちを学んだという。「ばあさんには悪いけど、本職の作るそばは数倍もおいしかった。そばとは、打ち方によって味がこんなに違うもんだとびっくりしました」と佐藤さんは笑う。
 そばは、稲刈りが終わる10月中旬に刈り取って、しっかり乾燥させる。「新そばの季節になるとわくわくしてきます。やはり香りが違いますから」と佐藤さん。百宅産の新そばが登場するのは11月中旬になるという。


前年同月
前月 INDEX 翌月
翌年同月

Home