1999年5月
●●●●● ハタハタの稚魚につける見えない標識 ●●●●●
 4月中旬から下旬にかけて、八森や男鹿、金浦(このうら)などの各漁港から合計448万匹ものハタハタの稚魚が日本海に放流された。
 サケやマスは産卵のため生まれた川に帰ってくることが知られているが、海で生まれ海で育つハタハタに本当に回帰性はあるのか。せっかく秋田で放流したハタハタが他県の沿岸で産卵することはないのか…?そんないじわるな質問を秋田県水産振興センターの海洋資源部長・杉山秀樹さんにぶつけてみた。
 「回帰性は確認されています」と杉山さんは自信たっぷり。「標識でも付けているんですか」と聞くと「一般の人には見えない特殊な標識を付けています」と不思議なことをおっしゃる。
 体長4〜5センチ、約500万匹もの稚魚に人間の手で1匹1匹に印を付けることは、とうてい無理。そこで稚魚や発眼卵をALC(アリザリンコンプレキソン)という溶液につける。ALCは歯医者さんなども使っている無害なものだが、これが魚のカルシウムに沈着し、標識になるというのだ。沈着するのは頭部にある耳石(じせき)という部分。
 「各海岸で水揚げされたハタハタの一部をセンターに集め、耳石を取り出して蛍光顕微鏡という特殊な顕微鏡で見ると、確かに標識ハタハタが混ざっています」
 調査船による資源調査でも耳石は大きな手がかりとなる。各海域のハタハタの耳石を丹念に調べることによって、秋田産ハタハタの回遊ルートもわかるというのだ。
 今年放流された稚魚は、来年の12月に2才魚となって秋田沿岸に帰って来る。
耳石1 耳石2



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