1999年6月
●● タケノコ採りの帰りには人もタケノコも温泉に入る ●●
 ヤブをこいで探し回り、あちこちから顔を出しているタケノコを見つけた時の感激。根元からポキッ、ポキッと折る時のあの感触。帰る時の肩にずしっと食い込む重量感。だから人はタケノコ採りに熱中する。
 ふーふー言いながら自宅に持ち帰っても、休む間もなく皮むきの作業が待っいる。これがタケノコ採りのつらいところだ。できるだけ新鮮なうちに処理しないと根元から次第に固くなり、しかもエグミが出てくる。大量に持ち帰った時は、それこそ家族総動員だ。
 小安峡(おやすきょう)温泉で有名な皆瀬村(みなせむら)では、缶詰めなど加工用のタケノコは山から降りてくるとその場で熱い温泉に入れ、さましてから皮むき作業にとりかかる。
「タケノコは折っても生きてるんだ。だがら湯っこに入れて殺してしまう。こうせば固くもならねし、皮もむきやすくなる。それにエグミも出ねんだ」と地元の人たちは言う。
 皆瀬村大湯の阿部旅館のご主人はシーズン中は毎日のように山に入る。「採ってきたその日に生のまま料理するのが一番だども、缶詰め用はできるだけ早く湯っこに入れるすな」とご主人。
「温泉の臭いはつかないすか?」と聞くと、「おらほの湯っこだば大丈夫だんす」と言う。小安峡温泉の泉質は「含芒硝(がんぼうしょう)食塩水」で無色透明の無味無臭。しかも源泉の温度は九十八度近くもある。
 温泉に入れた後は冷たい水の流れる沢に入れてさらす。「こうすればアクもすっかり抜けて、何年保存しても汁は濁らねすな」とご主人は温泉と沢水の効用を強調する。
 タケノコ採りの帰りは、人もタケノコも温泉に入る。これが皆瀬村の流儀だ。
タケノコ1 タケノコ2
秋田ではタケノコというと
イネ科の「根曲がり竹」(正式名称チシマザサ)の
若芽のことをいいます。
孟宗竹の太いタケノコは店頭には並びますが、
あまり一般的な食材ではありません。
こちらのページは秋田が舞台ではありませんが、
雰囲気が良く出ているので、勝手にリンク。(^ ^;)



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