2002年5月      ●●● 赤いキラキラにクラクラ?北浦の「タコのタル流し漁」 ●●●

タコ  「ハタハタが終わればミズダコ。まあ、1月から6月頃までだな」と教えてくれたのは男鹿市北浦の漁師、高野俊三さん(71)。「タル流し」と呼ばれるタコ釣りの漁法は、30年ほど前に青森県の漁師を先生として招いて講習会を開いてから定着。北浦地区では現在、40艘近くの船がこの漁法でタコを釣っている。
 とにかく仕掛けがおもしろい。釣り針のついた板の上に直径6センチほどのガラスの浮玉をくくりつけ、その周辺を赤と銀色にキラキラ光るビニールテープで飾り立てる。どう見てもタコの大好物のカニには見えないが、多くの漁師の話によればタコは赤系統のヒカリモノに興味を示し、近寄ってきては足で仕掛けをだき抱えるのだという。
 この仕掛けに重りとロープをつけ、海に投げ入れる。ロープの先端には遠くからでも見えるようにボンデン(旗竿)とタル(現在はプラスチック製)が結ばれており、タコがかかるとタルが立つようになっている。
 高橋さんはこの仕掛けを20本近くも投げ入れ、船をゆっくり走らせながらタルの動きを監視する。「ほら、あれだ」と高野さんはタルを指差すが、ボクには他のタルの動きと同じようにしか見えない。しかしロープをたぐり寄せると確かにタコが釣れている。感心していると、「あだりめえだべ、この商売で30年だ」と、ぼそっと言い放つ。
 それ以上に驚かされたのはその仕事ぶりだ。午前5時40分の出港から午後2時20分の入港までイスに腰を下ろしたのは、昼飯時の5分ほどだけ。それ以外は船べりに立って操船しながら、仕掛けを投入し、波間に漂う20個近くのタルを監視する。当たりのあるタルを回収し、ロープを手でたぐり寄せて大きなタコを船内に取り込む。この体力と集中力、とても71歳とは思えない。
 「あだりめえだべ。学校出る前がら漁師やってるがらよ」。さすが、根っからの漁師のひと言だ。


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