2002年7月      ●●● 町の小さな缶詰屋さん・タケノコの季節 ●●●

タケノコの缶詰屋  「お願いするんす」、「どうもー、間に合うすが?」、「頼むで!」など、さまざまな声をかけながらお客さんがタケノコのびっしり詰まった缶を持ち込んでくる。
 ここは田沢湖町生保内(おぼない)の缶詰屋さん。6月中旬、永井富雄さん(66)と奥さんの尊子さんは缶詰作りの真っ最中。シューシューと蒸気を出すボイラーの音も忙しそうに聞こえる。
 田沢湖町は県内でも有名なタケノコ(根曲がり竹)の産地。地元の人たちはシーズンともなると暇を見つけてはタケノコ採りに出かける。家に着いたら直ちにゆで、皮をむいてから約一晩流水にさらしてアクを抜く。それをあらかじめ受け取っておいた缶に詰め、工場へ届ける。
 工場では90℃の蒸気で約40分間蒸す「脱気」作業。直ちにフタをする「巻き締め」作業。100℃の熱湯で煮沸する「殺菌」作業と、それを冷やす「冷却」作業を経て缶詰ができ上がる。
 「細いのは自分の家で食べ、太くて立派なものは缶詰にする。缶詰は家で食うより、子どもや親戚に送るのがほとんどのようだな。タケノコの産地の人は大変だ」と富雄さんは言う。
 「加工代は1缶、110円。でも缶の仕入れやボイラーの油代を引けば、もうけはちょっと。まあ、かあちゃんの小使い程度だな」と富雄さんは尊子さんの顔をチラリと見る。
 タケノコのシーズン、富雄さんは工場にいることは少なく、もっぱら山の中。原料とするタケノコ採りのプロに変身する。
 「委託加工のほかに、製品の注文も受けているがらな。かあちゃんは気軽に注文を受けるども、採ってくるのは俺。今年は不作で例年並みの量を採るのは絶対無理。もう注文は受げるな!ってケンカもしょっちゅうだな」と富雄さんは笑う。
 タケノコシーズンは6月中旬まで。町の小さな缶詰屋さんの忙しさは、もうしばらく続く。


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